拝啓 貴方

激務の日々が続く。仕事は思ったように上手くいかないし、身体は毎朝重くなんだか前程よく動かない。「体壊さないようにね」なんて声を色んな人からよくかけられるけど、数ヶ月前から具合が絶好調な日なんてないように思えるから、これからもそんな日が来るとは思えなかった。

もっと上手くやれると思っていた。バイトの時はエースなんて呼ばれて、私が居れば大丈夫だねとか頼られていて、社員になってもそれなりにこなしていけるだろうと高を括っていた。人生そう上手くはいかないらしい。程々にこなして取り繕って上手くやってきた私の人生だから、そのボロが今頃出てきているのかもしれない。負ける気は更々無いけど。

 

そんな日々に希望の光を与えてくれるのが彼の存在で。彼といる時は嫌なこともしんどいことも何とかなるような気がしてくるから不思議だ。本当に久しぶりに心の底から好きだと思える人に出会えたと思う。私のここ1年の恋愛遍歴は結構壮絶だったから、正直もう好きな人なんて出来ないんじゃないかと思っていた。彼のことを好きになれて、そしてまさか恋人同士になれるなんて、数ヶ月前の私が聞いたら「そんな訳ないでしょ」と笑い飛ばされるだろうな。でもそのくらい自然に、本当に自然に彼の事が好きになっていた。マッチングアプリで何となく付き合った人に煙草の銘柄を合わせられた時は鳥肌が立ったのに(ごめんなさい)、彼が同じ銘柄を吸い始めた時は「可愛いヤツめ」なんて思ったし、彼女持ちとはサシで呑まん!という私のポリシーも彼と呑みに行く時は何処かへ飛んで行った(ごめんなさい)。

私が彼を気になり始めた時、彼には付き合っている人がいて。だから希望とか期待とかは最初からあまりしていなかった。恋愛なんてもう出来ないと思っていた私だ。誰かを好きになれただけでも幸せ、良かったじゃん。そう思うことにして、なるべく言動には気を遣った。後から聞いた話だと2回目の呑みの後のカラオケで手を繋いだらしいからアウトなのですが(酔い潰れて覚えていないです、申し訳ございません)。でもせっかくだしな、異動が決まったら気持ちくらいは伝えてもバチは当たらないかな、なんて考えていた年明けの寒い日。彼と飲みに行って予定通りカラオケに行って、予定通り歌い明かして飲み明かして、予定外にカラオケのソファで彼のことを抱き締めていた。そこからはもう引き返せないと思った。好きだと言ってしまった。酔いつぶれていたもんだからその時の彼の言葉は覚えていないのだけど、なんだか嬉しいことを言われたのは抱きしめた彼の温かさを感じながら幸せな気分になった記憶のお陰で覚えている。一部の友人にに大変お叱りを受けましたが、私はこの時彼にならもう遊ばれちゃってもいいやと本気で思っていました。2番目でもいいし、気まぐれでもいい。もうこんなふうに誰かを好きになること無いかもしれない。だったら傍に居たい。そんな気持ちで彼と何度か2人きりで会うようになって数回目のある日、彼から恋人と別れたことを聞かされた。「今ってどういう関係?」と唐突に聞かれた。酔いが一瞬醒めて、声が震えそうになった。聞くのがいちばん怖かったこと、でもいちばん聞きたかったこと。「付き合ってくれる?」私の言葉に彼は頷いてくれたのか抱き締めてくれたのか。正直ここも覚えていなくて(私は肝心な時にいつも酔っ払いだ。)、でもこの日を境に私は彼の恋人になった。死んでもいいと思った。

彼と一緒にいるのは心地よくて、今までは1人でいるのが大好きな私だったけど彼とならいつまででも一緒にいられた。音楽もお酒も煙草も全部波長が合って、合わないところを見つける方が難しい気がした。これから先、もしかしたらすれ違うことがあるかもしれない。でも彼だったら、そんな所も愛おしいと思える気がする。それくらい、大切な存在です。この文章は彼に見せると思うから、伝えられなかった部分を伝えるための大変長くて重めなラブレターとして、届けばいいなと思います。

 

敬具